日英翻訳のコツ

ここでは、日英翻訳のコツを例を挙げて紹介します。

日本語の特性・機械翻訳の特性を知ろう

日英翻訳のコツを紹介する前に、まずは日本語と英語の違い、人間の手による翻訳と機械翻訳の違いを説明します。
これらの特徴を知ることで、翻訳ソフトをより効果的に使うことができます。

日本語と英語の違い

日 本 語 英  語
あいまいで明言を避ける 直接的、断定的な表現
省略語(主語などの省略)が多い 省略語が少ない
文が長くなりがち 比較的簡潔
無生物は主語になりにくい 無生物でも主語になる
結論(話題の中心)が最後 結論(話題の中心)が最初

【ポイント】

  • できるだけ簡潔で、断定的な文章を書くことが必要

人間翻訳と機械翻訳の違い

人間翻訳 機械翻訳
行間を読むことができる 行間を読むことができない
文脈から省略を補うことができる 省略を補えない
原文に誤字脱字があっても訳せる 原文の誤字脱字は訳せない

【ポイント】

  • できるだけ省略がなく、正確な文章を書くことが必要

上記のような特徴を踏まえ、機械翻訳しやすいように日本語を書き換えるのが効果的です。次に、具体的な日本語書き換えのコツをご紹介します。

入力のルール

たとえばカタカナの長音「ー」がマイナス「-」になっていても、人間なら意味を推し量って訳すことができます。しかし、機械翻訳ではそのような融通がききません。ここでは入力に際しての注意点をご紹介します。

日本語表記の原則

なるべく漢字を使う

英語のように、単語と単語の間にスペースがない日本語は、ひらがなが多いと単語の切れ目がうまく判断できません。漢字に直せるところはなるべく漢字にしましょう。

ここではいの検査を受けてください。
  ↓
ここでは 胃(い) の検査を受けてください。
ここで 肺(はい) の検査を受けてください。

同音異義語の場合、漢字の誤りに注意する

同音異義語の漢字変換ミスも、機械翻訳では字義のままに解釈してしまいます。翻訳結果に疑問を感じたら、漢字の誤りを確認してみてください。

  原  文 訳  文
修正前 お金を振り返る I look back on money.
修正後 お金を振り替える。 I change money.
  原  文 訳  文
修正前 絶対絶命 The absolute end of life
修正後 絶体絶命 A desperate situation

長音記号はハイフンでなく「ー」を使う

長音「ー」の代わりにハイフンやダッシュ、マイナスが使われていないか注意しましょう。

  • ユ-ザ-フレンドリ-なコンピュ―タ
      ↓
    ユーザーフレンドリーなコンピュータ

略語は略さずに書く

頻繁に登場する略語は、ユーザー辞書に登録するのもお勧めです。

  • 知財部 → 知的財産部
  • セレブ → セレブリティ

文章を短くする

機械翻訳のコツとしてよく言われるのが、「文を短く切る」ということです。日本語では1文に複数の話題を盛り込むことができますが、原則として、1文にはひとつの内容を書くことをお勧めします。
また、日本語は断定的な言い方をせず、語尾をあいまいにぼかす表現が好まれますが、こうした文もできるだけ簡潔に書きましょう。

文章を切る

節の区切り(動詞の切れ目や接続助詞「~が」)で文を分割する

  • アメリカのメジャーリーグで活躍する日本人はたくさんいるが、中でも注目を集めているのがヤンキースの松井秀喜だ。
      ↓
    アメリカのメジャーリーグで活躍する日本人はたくさんいる。中でも注目を集めているのがヤンキースの松井秀喜だ。

文を分割した後、必要に応じて適切な接続詞や省略された主語などを補う

  • 干ばつと冷害が交互に発生し、農家は甚大な被害を受けており、政府の早急な対策が必要である。
      ↓
    干ばつと冷害が交互に発生したため、農家は甚大な被害を受けている。そのため、政府の早急な対策が必要である。

文を簡潔にする

不要な言い回し(「~ということ」「~ものである」「~したいと思う」など)を取り除く

  • アマチュアがプロを凌ぐのは、音楽の世界だけに限ったものではない。
      ↓
    アマチュアがプロを凌ぐのは、音楽の分野に限らない。
  • 検査の結果、即日入院というかたちになった。
      ↓
    検査の結果、即日入院した。
  • デフレの原因としては、アジアの工業力の増大が考えられる。
      ↓
    デフレの原因はアジアの工業力の増大と考えられる。

重複する表現を避ける

  • ご使用前に取扱説明書を一読してから使用してください。
      ↓
    ご使用前に取扱説明書を一読してください。
    取扱説明書を一読してから使用してください。

あいまいな表現を避ける

日本語は状況に依存する度合いが高いため、主語がなかったり、「てにをは」があいまいだったりしても意味が通ります。しかし、機械翻訳ではより限定的な文章を書くことが必要です。

具体的な動詞を使う

「~になる」「~を行う」「~する」といった動詞はなるべく使わず、限定的な意味の動詞を使いましょう。

  • 信号が赤になる。 → 信号が赤に変わる。
  • 継続調査を行う。 → 継続的に調査する。
  • 私はコーヒーにします。 → 私にはコーヒーをください。

適切な助詞を使う

「てにをは」に気をつけるだけで、翻訳精度が格段にアップします。
特に、「象は鼻が長い」の「は」のように、主格を表さない「は」や、「彼女のいなくなった後」の「の」のように、主格を表す「の」には注意してください。

  • 最近のゲーム機は操作が難しい。 → 最近のゲーム機の操作は難しい。

省略を補う

必要に応じて、省略されている主語や目的語、動詞を補うことで、より正確な翻訳ができます。

  • ご意見をお聞かせください。 → あなたのご意見をお聞かせください。

係り受けを明確にする

読み方によって意味がどちらとも取れる文章は、語順を変えるなどして、明確に解釈できる文章にしましょう。

  • 彼女は新発売のお菓子とジュースを買った。
      ↓
    彼女はジュースと新発売のお菓子を買った。

より英語にしやすい表現にする

日本語として間違っていなくても、英語に訳しにくい表現というものがあります。こうした表現は同じ意味の別の語に書き換えるのが効果的です。
また、英語では無生物主語がよく見られます。

複合名詞・複合動詞を避ける

  • 銃規制緩和批判 → 銃の規制緩和に対する批判

無理な造語(「~的」「~性」「~化」など)を避ける

  • デザイン性に優れたデジタルカメラ
      ↓
    優れたデザインのデジタルカメラ

無生物主語を使う

  • このシステムによって、作業効率が大幅に改善しました。
      ↓
    このシステムは作業効率を大幅に改善しました。

英語の後編集

日本語には単数・複数や冠詞といった情報がないため、英語に翻訳した結果は、必要に応じて後編集が必要です。ここでは、後編集のポイントをご紹介します。

単数・複数の確認

原文に「多くの」や「三人の」といった複数を示す情報があるときには、複数形で翻訳されますが、特に情報がないものは単数・複数が適切に訳されない場合があります。

原  文 先生は生徒に数学を教えた。
訳  文 The teacher taught a student mathematics.
後編集 The teacher taught students mathematics.

冠詞の確認

定冠詞・不定冠詞の情報は日本語からは判断できないため、翻訳後、特定のものには定冠詞をつけます。

原  文 内訳は請求書に記載されています。
訳  文 The breakdown is mentioned in a bill.
後編集 Details are mentioned in the bill.

時制の一致

たとえば「私はサンドイッチを食べ、彼はハンバーガーを食べた。」のような文では、後の動詞に合わせて「I ate a sandwich, and he ate a hamburger.」と訳されますが、仮定文や現在完了形、過去完了形の文章の場合には時制に注意してください。

原  文 もし私が死んだら、私の母は悲しむでしょう。
訳  文 My mother will grieve if I die.
後編集 My mother would grieve If I were to die.

原  文 私が四歳だったときから、私は彼女を知っています。
訳  文 I know her since I was 4 years old.
後編集 I have known her since I was 4 years old.

代名詞の確認

定冠詞・不定冠詞の情報は日本語からは判断できないため、翻訳後、特定のものには定冠詞をつけます。

原  文 返事をお待ちしております。
訳  文 I wait for an answer.
後編集 I wait for your answer.

前置詞の確認

各単語に意味素性を持たせて最適の前置詞が使用されるようになっていますが、文章によっては適切な前置詞が使われていない場合もありますので確認してください。

原  文 そのケーキはそば粉で作られている。
訳  文 The cake is made with buckwheat flour.
後編集 The cake is made from buckwheat flour.