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前回まで、機械翻訳を併用した翻訳メモリの活用法をご案内しました。今回は翻訳メモリから類似した文を検索し、それを参考に人の手で文を整える「類似文検索」をご案内します。

この記事では、これまでに登録した文を使用して説明を行います。そのままお読みいただくこともできますが、事前に「1. 登録してみよう」「2. 似たような文を翻訳してみよう」「3. 変化する箇所を明示する」をお読みいただくと、より詳しく本記事の内容を把握いただけます。

この章では、類似文検索の機能を使用しない場合・使用する場合の挙動をご覧いただきます。
読み進む前にあらかじめ、[翻訳] メニュー> [翻訳設定] > [翻訳] タブ > [訳文生成方法(優先順)] の設定内容をご確認いただき、「類似文検索」にチェックが入っている場合は外しておいてください。
また、[翻訳メモリ]メニュー> [翻訳設定] > [検索オプション] タブにて、「一致率」を70%程度に設定してください。

(注意:)

  • 翻訳メモリは一度登録すれば日→英、英→日の両方で利用できます。また、登録方法は日→英、英→日で共通です。
  • 本エントリでの翻訳結果は、PC-Transer V26を用いて翻訳した場合の一例です。製品種類やバージョン・学習状況・使用している辞書など、お使いの環境によって異なる訳となる場合があります。
  • 翻訳メモリはTranserシリーズ(Professional)および翻訳ブレインの機能です。翻訳ピカイチおよびTranser(Personal)、明解翻訳ではご利用いただけません。
  1. 自動文型一致文検索で訳文が生成されない例
  2. 類似文検索を使用する
  3. 翻訳メモリペインを使用して訳文を修正する
  4. 複数の訳候補から訳文を選択する
  5. 補足

1. 自動文型一致文検索で訳文が生成されない例

たとえば以下の文を翻訳メモリに登録します。
(この文は前章「3. 変化する箇所を明示する」で登録したものです。既に登録済みの方は再登録は不要です)

【対訳文A】
日本文(原文A):
小麦粉100g、砂糖100g、牛乳80ccを用意し、小麦粉は常温に戻して使用する。
英文(訳文A):
Prepare 100g of flour, 100g of sugar and 80cc of milk, and bring back the flour to room temperature.

この翻訳メモリが適用されることを期待して、以下の文を翻訳します。

翻訳する文(原文B):
小麦粉100g、砂糖100g、牛乳80ccを用意し、牛乳は常温に戻して使用する。
期待する訳文:
Prepare 100g of flour, 100g of sugar and 50cc of milk, and bring back the milk to room temperature.

しかしこの原文では登録してある翻訳メモリを再利用できず、辞書を用いた機械翻訳が訳文として生成されました。

翻訳結果(訳文B):
I prepare 100 g of flour, sugar 100 g, milk 80cc and I get the milk back to normal temperature and use it.

文番号1の対訳(原文A・訳文A)を翻訳メモリに登録した後、文番号2の原文Bを翻訳した例。ほとんど同じ文ですが、翻訳メモリ登録した対訳文が活用されず、機械翻訳された結果が表示されました。

文番号1の対訳(原文A・訳文A)を翻訳メモリに登録した後、文番号2の原文Bを翻訳した例。ほとんど同じ文ですが、翻訳メモリ登録した対訳文が活用されず、機械翻訳された結果が表示されました。

念のため、原文Bが翻訳メモリに登録されている文とどれほど似ているかを確認しましょう。原文Bにカーソルを置き、ツールバーの[カレント文の選択]をクリック(またはCtrl+G)すると、翻訳メモリペインに原文Bと訳文Bが取り込まれます。
翻訳メモリツールバーの[類似文検索]をクリック(またはCtrl+Shift+L)すると、翻訳メモリから原文Bに近い対訳文:原文Aと訳文Aが検索され、検索結果表示エリアに表示されます。この例では類似度は85%ありますが、それでも自動文型一致文検索が適用されなかったということになります。

2行目の文を翻訳メモリペインに移し、翻訳メモリペイン内にて類似文検索を行った結果。「検索結果」では原文との差異がどこにあるかを確認できるほか、2つの文の類似度が表示されます

文番号2の文を翻訳メモリペインに移し、翻訳メモリペイン内にて類似文検索を行った結果。「検索結果」では原文との差異がどこにあるかを確認できるほか、2つの文の類似度が表示されます

自動文型一致文検索が適用されなかった理由は「訳文A中にふたつある、どちらの “flour” を “milk” に置換するか判断できなかったから」です(詳細は前回記事「c. 自動文型一致文検索できない場合」で詳しく説明しています)。
しかし原文Aと原文Bの違いはほとんどないため、「訳文としても似ていることが期待される」訳文Aを活用し、少し手直しすれば原文Bの訳となるはずです。これだけで翻訳の効率は飛躍的に向上するでしょう。

次章では、このような使い方をするための「類似文検索」について解説します。

 

1. 類似文検索を使用する

翻訳時に類似文検索を使用するには、以下の設定変更を実施してください。
[翻訳]メニュー>[翻訳設定]>[翻訳]タブ>[訳文生成方法(優先順)]にて「類似文検索」にチェックを入れ、[OK]します。

翻訳設定の「翻訳」タブで、翻訳メモリの細かな使用方法を設定可能です。ここでは「類似文検索」にチェックを入れます。

翻訳設定の「翻訳」タブで、翻訳メモリの細かな使用方法を設定可能です。ここでは「類似文検索」にチェックを入れます。

訳文生成方法は優先順に並んでおり、より上にあるものから順に適用が試されます。「類似文検索」にチェックを入れることで、上の方でチェックされている検索方法で訳文が生成されなかった文は類似文検索を行い、それでも翻訳メモリに適合しなかった文が機械翻訳されるようになります。実際に翻訳を試してみましょう。

原文B:
小麦粉100g、砂糖100g、牛乳80ccを用意し、牛乳は常温に戻して使用する。
訳文B’
Prepare 100g of flour, 100g of sugar and 80cc of milk, and bring back the flour to room temperature.

先ほどは自動文型一致文検索での訳出ができず機械翻訳された原文Bの訳ですが、同じ文を文番号3に入力して翻訳したところ、今度は類似文検索が適用されました。翻訳メモリに登録した訳文Aとまったく同じ文が翻訳結果として選ばれ、また訳文は類似文検索で訳出されたことを示す赤色で表示されています。

類似文検索で翻訳した例(3行目)。自動文型一致文検索できない場合でも原文に近い文が例示されるため、機械翻訳の結果(2行目)から全文を起こす必要がなく、微修正のみで完成訳を作成することができます。

類似文検索で翻訳した例(文番号3)。自動文型一致文検索できない場合でも原文に近い文が例示されるため、機械翻訳された文(文番号2)から全文を起こす必要がなく、微修正のみで完成訳を作成することができます。

このように類似文検索は「原文と似た文を探し出して訳の候補として提示する」ための機能です。「自動文型一致文検索」「文型一致文検索」のように置換の処理は実施しないため、完成訳とするためには手直しが必須となる点にご注意ください。

類似文検索で得られた訳文を下地として適宜修正を行い、完成訳を作成します。訳文を編集すると文はロックされます

類似文検索で得られた訳文を下地として適宜修正を行い、完成訳を作成します。訳文を編集すると文はロックされます

 

3.翻訳メモリペインを使用して訳文を修正する

前章では翻訳時に訳文として類似文を出力する「類似文検索」の動きをご紹介しましたが、この設定を行わずとも、翻訳メモリに登録されている文を参考に訳文を作成することが可能です。

「翻訳メモリペイン」をご覧ください。先ほど文番号2の原文Bと訳文Bを翻訳メモリペインに移動し、類似文検索した結果が表示されています。検索結果のエリアには翻訳メモリ登録されている原文Aと訳文Aが表示され、さらに原文Aは原文Bとの差に相当する箇所がフォント色と下線で強調表示されています。
ここで検索結果の訳文Aをダブルクリックすると、翻訳メモリペインの訳文エリア(訳文B)が検索結果の訳文(訳文A)で上書きされます。

 

検索された訳文をダブルクリックすると、登録されている訳文が訳文エリアにコピー(上書き)されます

検索された訳文をダブルクリックすると、登録されている訳文が訳文エリアにコピー(上書き)されます

検索された原文の差異を参考に、訳文エリアの文を修正してください。

原文との差異を参考に、訳文を修正してください

修正が完了したら「対訳文を確定」ボタンをクリック(またはCtrl+W)します。

最後に「対訳文を確定」ボタンを押すことで、取り込んだ元の文が上書きされます

最後に「対訳文を確定」ボタンを押す(またはCtrl+W)ことで、取り込んだ元の文が上書きされます

元の文である文番号2の訳文が翻訳メモリペインで編集した訳文に置き換わり、文がロックされました。

元の文に訳を反映しました。修正した行はロックがかかります

元の文に訳を反映しました。修正した行はロックがかかります

 

4. 複数の訳候補から訳文を選択する

似た文をいくつも登録してある場合、翻訳メモリペインの検索結果には複数の訳文候補が表示されます。翻訳メモリペインを使わずに類似文検索で訳文を作る場合は類似度の一番高い文だけを候補として表示します(訳文は赤く表示されます)が、それ以外の類似文を訳に流用したい場合は翻訳メモリペインで適切な訳文を探し、訳文として反映させます。方法は「3.翻訳メモリペインを使用して訳文を修正する」と同じように、他の訳候補を検索したい文を翻訳メモリペインに取り込み、検索結果の候補から訳文を選んでください。

類似文検索で複数の文が候補として検索された例。より好ましい訳文をダブルクリックして訳文エリアに移動させ、適宜修正して「対訳文確定」してください

類似文検索で複数の文が候補として検索された例。より好ましい訳文をダブルクリックして訳文エリアに移動させ、適宜修正して「対訳文確定」してください

類似文検索は完全一致文検索とともに、辞書を用いた機械翻訳の言い回しに頼ることなくポストエディットを行うユーザー様に広くご利用いただいている、翻訳メモリ機能の基本となる検索方法です。また、文の構造により自動文型一致文検索が行えない場合のサジェストとして有効です。翻訳メモリペインで文の差異を確認する方法とともにご利用ください。

補足

類似文検索の結果は、設定されている一致率に左右されます。一致率については「2. 似たような文を翻訳してみよう」の「3. 翻訳メモリの類似度(一致率)」をご覧ください。

 

 


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