薬学分野の翻訳で失敗しないためのポイントは?高品質な翻訳会社を選ぶ方法を解説

薬学分野の翻訳

薬学分野の翻訳は、新薬開発から論文投稿、薬事申請まで、あらゆる場面で不可欠な業務です。

しかし、その専門性の高さから、翻訳の品質が研究成果や企業の信頼性に直結するため、翻訳会社選びは慎重に行う必要があります。

本記事では、薬学分野の翻訳の重要性から、信頼できる翻訳会社を見極めるための具体的なポイント、料金相場までを詳しく解説します。

薬学分野の翻訳とは?医療翻訳との違い

薬学分野の翻訳は、医薬品の研究開発、製造、販売、市販後調査など、医薬品ライフサイクルのあらゆる段階で発生する文書を対象とする専門的な翻訳です。医療翻訳という大きな枠組みの中に含まれますが、特に「薬」に特化している点が特徴です。

医療翻訳が診断、治療、医療機器など幅広い分野をカバーするのに対し、薬学分野の翻訳は薬理学、毒性学、製剤学、臨床試験といった、より深い化学的・生物学的な知識が求められます。

薬学分野の翻訳が扱う主要な文書

薬学分野の翻訳で取り扱われる文書は多岐にわたります。専門性に応じて、求められる知識や翻訳のスタイルも異なります。

文書カテゴリ 具体的な文書例
研究開発段階 非臨床試験関連文書
学術論文
学会発表資料
薬事申請 CTD(コモン・テクニカル・ドキュメント)
治験総括報告書
添付文書
製造・販売 製造手順書
品質管理関連文書
医薬品インタビューフォーム
市販後 安全性定期報告(PSUR)
副作用情報
医療従事者向け資材

いずれも内容の正確性が極めて重要であり、専門用語の知識はもちろん、各国の規制やガイドラインへの理解も不可欠です。

高い専門性が求められる理由

薬学分野の翻訳に高い専門性が求められるのは、翻訳が人々の生命や健康に直接的な影響を与えうるからです。例えば、治験実施計画書の誤訳は試験の進行に支障をきたすだけでなく、被験者の安全を脅かす可能性があります。

添付文書の誤訳は医薬品の不適切な使用につながり、深刻な健康被害を引き起こしかねません。翻訳者には語学力に加えて、薬学、医学、化学、生物学、さらには関連法規に関する深く正確な知識が要求されるのです。

 

薬学分野の翻訳を翻訳会社に依頼するメリット

機械翻訳の精度が向上している現代においても、専門性の高い薬学分野の翻訳をプロの翻訳会社に依頼するメリットは計り知れません。
特に品質、時間、セキュリティの観点からメリットを見ていきましょう。

メリット1:圧倒的な品質と正確性が担保される

専門の翻訳会社には、薬学のバックグラウンドを持つ経験豊富な翻訳者が多数在籍しています。専門用語を正しく理解し、文脈に応じた適切な訳出が可能です。

翻訳者による一次翻訳の後、別のチェッカーがレビューを行う「ダブルチェック体制」を敷いている会社がほとんどです。誤訳や訳抜け、表記の揺れなどを防ぎ、出版レベルや申請レベルの高品質な翻訳を実現します。

メリット2:時間とリソースが大幅に節約される

膨大な量の薬学文書を、専門知識を持つ研究者や担当者が自ら翻訳するのは、非常に大きな負担となります。本来注力すべき研究開発や薬事申請業務の時間が奪われてしまい、プロジェクト全体の遅延にもつながりかねません。

翻訳会社に外注すると、社員はコア業務に集中でき、組織全体としての生産性が向上します。結果として、時間と人件費という貴重なリソースを大幅に節約できるのです。

メリット3:機密情報とセキュリティが保持される

新薬開発や申請に関する情報は、企業の生命線ともいえる高度な機密情報です。信頼できる翻訳会社は、国際的な情報セキュリティ規格(ISO27001など)の認証を取得している場合が多く、厳格なセキュリティポリシーに基づき情報を管理しています。

秘密保持契約(NDA)の締結はもちろん、データの暗号化やアクセス制限など、情報漏洩を防ぐための万全な対策が講じられており、安心して機密文書を預けられます。

 

失敗しない薬学分野の翻訳会社の選び方

数ある翻訳会社の中から、自社のニーズに合った最適なパートナーを選ぶためには、いくつかの重要なポイントを確認する必要があります。

料金の安さだけで選んでしまうと、品質の低さから再翻訳が必要になるなど、かえってコストと時間がかかる結果になりかねません。

薬学分野の翻訳実績を確認する

まず、その翻訳会社が薬学分野でどれだけの実績を持っているかを確認しましょう。会社のウェブサイトで、過去にどのような文書(論文、CTD、添付文書など)の翻訳を手がけてきたか、取引先にどのような製薬会社や研究機関があるかをチェックします。

具体的な実績が豊富であるほど、その分野におけるノウハウや対応力を期待できます。特に、自社が依頼したい文書と同じ種類の翻訳実績が豊富であれば、より安心して任せることができるでしょう。

翻訳者の専門性や資格で判断する

翻訳の品質は、翻訳者の能力に大きく依存します。どのような専門性を持つ翻訳者が在籍しているかを確認しましょう。

薬学、医学、化学系の学位(博士号、修士号)を持つ翻訳者や、製薬会社での実務経験がある翻訳者がいる会社は信頼性が高いと言えます。翻訳関連の資格(JTFほんやく検定など)の有無も、翻訳者のスキルを客観的に測る一つの指標となります。

品質管理のプロセスが明確か確認する

高品質な翻訳を安定的に提供するためには、しっかりとした品質管理(QC)プロセスが不可欠です。問い合わせの際に、翻訳プロセスについて具体的に質問してみましょう。

例えば、「翻訳は誰が行い、レビューは誰がどのように行うのか」「翻訳支援ツール(CATツール)や用語集を活用しているか」といった点です。翻訳からレビュー、最終チェックまでのフローが明確で、体系化されている会社は、品質に対する意識が高いと判断できます。

チェック項目 確認すべきポイント
翻訳体制 翻訳者とチェッカーによるダブルチェック体制があるか
品質基準 国際的な品質規格(ISO17100など)を取得しているか
ツール活用 翻訳メモリや用語集を活用し、品質の均一性を保っているか
フィードバック対応 納品後の修正依頼や質問に迅速に対応してくれるか

セキュリティ体制は万全か確認する

前述の通り、薬学関連文書は機密情報の塊です。情報漏洩は企業の存続に関わる重大なリスクとなります。翻訳会社のセキュリティ体制は必ず確認すべき項目です。

秘密保持契約の締結はもちろんのこと、データの取り扱い方法(暗号化、サーバー管理体制など)や、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)などの第三者認証を取得しているかどうかを確認しましょう。

料金体系と見積もりに透明性があるか確認する

料金体系が明確であることも、信頼できる会社を見極めるポイントです。一般的に、翻訳料金は原文の文字数や単語数に基づいた「文字単価」「ワード単価」で算出されます。

見積もりを依頼した際に、料金の内訳(翻訳料金、レビュー料金、その他諸経費など)が詳細に記載されているかを確認しましょう。不明瞭な点があれば、遠慮なく質問し、納得できる説明が得られる会社を選ぶべきです。

 

薬学分野の翻訳の料金相場と納期

翻訳を依頼する上で、コストとスケジュールは非常に重要な要素です。
ここでは、薬学分野の翻訳の料金がどのように決まるのか、そしてどれくらいの費用と期間がかかるのか、目安について解説します。

料金が決まる仕組みとは?

薬学分野の翻訳の料金は、主に以下の要素によって変動します。

言語の組み合わせ 日本語から英語(日英翻訳)か、英語から日本語(英日翻訳)かによって単価が異なる。一般的に英日翻訳の方が高くなる傾向がある。
専門性・難易度 一般的な内容よりも、高度な専門知識を要する論文や申請書類などは単価が高く設定される。
翻訳の品質レベル 翻訳のみ、翻訳+ネイティブチェック、翻訳+専門家レビューなど、どこまでの品質を求めるかによって料金が変わる。
納期 通常納期よりも短い「特急対応」を希望する場合、追加料金が発生することがある
翻訳量 大量の文書を依頼する場合には、ボリュームディスカウントが適用されることもある。

言語別の料金相場一覧

あくまで一般的な目安ですが料金相場は以下のようになります。依頼する際には、必ず複数の会社から見積もりを取り、比較検討することをおすすめします。

翻訳の種類 料金相場(1文字あたり / 1ワードあたり)
英日翻訳(英語→日本語) 1ワードあたり 20円~35円
日英翻訳(日本語→英語) 1文字あたり 15円~30円

翻訳にかかる期間の目安

納期は、翻訳の量や難易度、翻訳会社の稼働状況によって大きく変わりますが、一般的な翻訳者が1日に処理できる分量には限りがあります。例えば、英日翻訳であれば1日に2,000ワード程度、日英翻訳であれば1日に3,000〜4,000文字程度が目安とされています。

これにレビューや校正の時間が加わるため、数ページの文書であっても、依頼から納品まで数日~1週間程度は見ておくと良いでしょう。正確な納期については、見積もり時に必ず確認してください。

 

薬学分野の翻訳の依頼から納品までの流れ

実際に翻訳会社に依頼する場合、どのようなステップで進んでいくのでしょうか。

ここでは、一般的な依頼から納品までの流れをご紹介します。事前に流れを理解しておくことで、スムーズな進行が可能になります。

ステップ1:問い合わせと見積もり

まずは翻訳会社のウェブサイトのフォームやメール、電話で問い合わせを行います。翻訳したい文書の種類、分量(文字数やページ数)、希望する言語、希望納期、その他要望などをできるだけ具体的に伝えます。

可能であれば、翻訳対象の文書の一部をサンプルとして提出すると、より正確な見積もりが得られます。

ステップ2:翻訳者と翻訳プロセスの確定

見積もり内容に合意し、正式に発注すると、翻訳会社はプロジェクトマネージャーをアサインし、最適な翻訳者を選定します。用語集の有無や文体のトーンなど、翻訳に関する細かい仕様の確認が行われます。

依頼者側で指定の用語集などがあれば、このタイミングで共有しましょう。

ステップ3:翻訳・レビュー作業

選定された専門翻訳者が、仕様に基づいて翻訳作業を開始します。

一次翻訳が完了すると、次に別のチェッカー(レビュアー)が原文と訳文を照合し、誤訳や訳抜け、表現の不自然さなどをチェック・修正します。二重、三重のチェック体制が、翻訳の品質を担保する上で非常に重要です。

ステップ4:納品とアフターフォロー

全てのチェックが完了した後、指定された形式で翻訳物が納品されます。納品物を確認し、もし疑問点や修正の希望があれば、翻訳会社にフィードバックを行います。

多くの会社では、納品後一定期間内であれば、無償で修正に応じてくれるアフターフォロー体制を整えています。

 

手間もコストも削減したいときは機械翻訳が活用できる

新薬の開発や国際的な学術発表など、スピードが重視される場面では、従来の翻訳方法がボトルネックになることも少なくありません。

しかし、近年のAI技術の進化により、機械翻訳(AI翻訳)がその課題を解決する有効な手段として注目されています。最新のAI翻訳ツールは、膨大なデータを学習することで、専門分野においても高精度な翻訳を瞬時に行うことが可能です。翻訳にかかる時間を大幅に短縮できるだけでなく、翻訳会社への依頼や翻訳者を探す手間といったコストも削減できます。

薬学分野に特化したAI翻訳ツールでコストを削減

薬学分野の翻訳は専門性が非常に高いため、人力での翻訳を依頼すると高額な費用が発生することが一般的です。

しかし、薬学用語や特有の表現に対応したAI翻訳ツールを活用すれば、コストを大幅に抑えることが可能です。社内資料の翻訳や研究論文の一次翻訳など、すべてを人力で行う必要がない場面でAI翻訳を導入することで、全体の翻訳費用を最適化できます。

以下に、人力翻訳とAI翻訳のコストと特徴を比較した表を記載します。

項目 人力翻訳 AI翻訳(機械翻訳)
コスト 高額(文字単価、単語単価) 比較的安価または無料
スピード 時間がかかる 非常に速い
対応量 大量の場合は時間と費用が増加 大量の文書も瞬時に対応可能
専門性 翻訳者のスキルに依存 専門分野特化型エンジンで対応可能
活用場面 公的文書、契約書、最終稿 社内資料、情報収集、下訳

目的に応じて人力翻訳とAI翻訳を使い分けることで、薬学分野の翻訳のコストパフォーマンスを最大化できます。

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最新の機械翻訳で翻訳スピードを大幅に向上

研究開発の分野では、情報の鮮度が成功を左右することも少なくありません。海外の最新論文や臨床試験データをいち早く収集し、内容を正確に理解するためには翻訳のスピードが不可欠です。

最新のAI翻訳ツールは、数千字の文章であっても数秒から数分で翻訳を完了させられるのです。圧倒的なスピードにより、業務効率を劇的に改善させられます。また、翻訳支援ツールと連携できるサービスも増えており、AI翻訳が出力した訳文を専門家が修正・校正する「ポストエディット」という手法も普及しています。

翻訳の精度を担保しつつ、ゼロから翻訳するよりもはるかに短い時間で質の高い訳文を作成できます。

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まとめ

薬学分野の翻訳は、専門性と正確性が命です。信頼できる翻訳会社をパートナーに選ぶことは、研究開発の促進やスムーズな薬事申請、ひいては世界中の人々の健康に貢献するための重要なステップと言えます。

本記事で紹介した選び方のポイントを参考に、品質、実績、セキュリティ、料金などを総合的に比較検討し、自社のニーズに最も合った翻訳会社を見つけてください。

クロスランゲージの「プロフェッショナル翻訳 」は、専門知識を持つ翻訳者が、論文や治験関連資料、製薬文書などを正確に訳し、厳格な品質管理とネイティブチェックを徹底することで、信頼性の高い成果物をお届けします。ぜひご検討ください。

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