紙の書類や画像PDFに書かれた外国語を、コピー&ペーストできずに困った経験はありませんか。スキャンしたデータは単なる画像のため、通常の翻訳ツールではテキストとして認識されません。このような場面で役立つのが「スキャン翻訳」です。
本記事では、スキャン翻訳の仕組みから、PCやスマートフォンで使える具体的なツール、翻訳精度を上げるコツまで詳しく解説します。
スキャン翻訳とは?通常の翻訳との違い
スキャン翻訳とは、スキャナやカメラで取り込んだ画像データに含まれる文字を、テキストデータに変換して翻訳する技術のことです。通常の翻訳ツールがテキストデータを対象とするのに対し、スキャン翻訳は画像データを扱う点が大きな違いです。
スキャンデータが直接翻訳できない理由
スキャナで取り込んだ書類やPDFファイルは、一見すると文字が書かれているように見えますが、コンピュータ上では一枚の「画像」として扱われます。そのため、文書作成ソフトのようにテキストを選択してコピーすることができません。多くの翻訳ツールはテキストデータを入力する必要があるため、画像データであるスキャンしたファイルは直接翻訳できないのです。
翻訳の鍵となるOCR技術とは
この問題を解決するのが「OCR(Optical Character Recognition/光学的文字認識)」という技術です。OCRは、画像データの中から文字の形状やパターンを識別し、編集可能なテキストデータに変換する役割を担います。スキャン翻訳ツールやアプリの多くは、このOCR機能を内蔵しており、「画像の読み取り(OCR処理)」と「テキストの翻訳」を連続して行うことで、画像内の文字を翻訳できるのです。
機能 | 概要 |
スキャン | 紙の文書をデジタル画像データ(PDF、JPEGなど)に変換します。 |
OCR処理 | 画像データから文字を認識し、編集可能なテキストデータに変換します。 |
翻訳 | 抽出されたテキストデータを指定した言語に翻訳します。 |
PCで使えるスキャン翻訳ツール
ビジネス文書など、PCでスキャンしたPDFを扱う場面は多いです。ここでは、PCで利用できるスキャン翻訳の方法をいくつか紹介します。
PDF編集ソフトを活用する方法
OCR機能を搭載したPDF編集ソフトを使えば、スキャンしたPDFを翻訳可能なテキストデータに変換できます。代表的なソフトに「PDFelement」などがあり、翻訳機能まで統合されているものも多いです。 この方法のメリットは、翻訳後のレイアウトを保持しやすく、そのまま文書を編集できる点です。機密性の高い文書を扱う場合でも、オフラインで作業できるため安心です。
参考:[公式]PDF編集はこれ1本でOK!| Wondershare PDFelement (PDFエレメント)
オンラインの翻訳サービスを利用する
Webブラウザ上で利用できるオンライン翻訳サービスも便利です。多くは無料で利用でき、ファイルをアップロードするだけでOCR処理から翻訳まで行ってくれます。ただし、無料サービスの場合はセキュリティに注意が必要です。利用規約によっては、アップロードしたデータが二次利用される可能性もあるため、機密情報や個人情報を含む文書の翻訳には適していません。
ブラウザの拡張機能で翻訳する
Webページ上の画像を翻訳したい場合には、ブラウザの拡張機能が役立ちます。画面キャプチャ機能とOCR、翻訳機能を組み合わせた拡張機能をインストールすれば、Webサイト上の画像に含まれるテキストも手軽に翻訳できます。
スマホで使えるスキャン翻訳アプリ
外出先で看板やメニューを読みたい時など、スマートフォンを使ったスキャン翻訳は非常に便利です。多くのアプリが無料で提供されており、手軽に利用できます。
カメラ機能でリアルタイム翻訳する
スマートフォンのカメラを翻訳したい対象にかざすだけで、画面上に翻訳結果をリアルタイムで表示する機能です。「Google 翻訳」アプリなどがこの機能に対応しており、海外旅行中に現地の言葉が分からなくても、メニューや案内表示の内容をその場で理解できます。
参考:Google 翻訳
画像ファイルを取り込んで翻訳する
スマートフォンで撮影した写真や、保存されている画像ファイルを取り込んで翻訳する方法もあります。後からゆっくり内容を確認したい場合や、複数の画像を一括で翻訳したい場合に便利です。こちらも多くの翻訳アプリが対応しており、画像内のテキストを認識して翻訳結果を表示してくれます。
おすすめのスキャン翻訳ツール・アプリ5選
ここでは、具体的におすすめのスキャン翻訳ツールとアプリを、特徴と合わせて紹介します。
【PC向け】PDFelement
Wondershare社が提供する多機能なPDF編集ソフトです。 高度なOCR機能を搭載しており、スキャンしたPDFのテキストを正確に認識します。翻訳機能も内蔵しているため、PDFを開いてから翻訳、編集までの一連の作業をスムーズに行えるのが魅力です。ビジネス用途でPDFを扱う機会が多い方におすすめです。
参考:[公式]PDF編集はこれ1本でOK!| Wondershare PDFelement (PDFエレメント)
【PC向け】DeepL
精度の高い翻訳で知られるDeepLも、PDFファイルの翻訳に対応しています。 ファイルをドラッグ&ドロップするだけで、レイアウトをある程度維持したまま翻訳結果を生成します。無料版でも利用できますが、有料版の「DeepL Pro」ではセキュリティが強化され、文字数制限も緩和されるため、ビジネス利用でも安心して使えます。
【スマホ向け】Google 翻訳
Googleが提供する無料の翻訳アプリで、多言語に対応しています。 リアルタイムのカメラ翻訳、画像取り込み翻訳、音声翻訳など、多彩な機能を備えており、海外旅行や日常の様々な場面で活躍します。使いやすさと機能の豊富さが特徴です。
参考:Google 翻訳
【スマホ向け】Microsoft Translator
Microsoft社が提供する無料翻訳アプリです。テキスト、音声、画像の翻訳に対応しています。シンプルなインターフェースで直感的に操作できるのが特徴です。複数人での会話をリアルタイムで翻訳する機能もあり、国際的なコミュニケーションにも役立ちます。
用途別ツールの選び方
どのツールを選ぶべきか、目的別にまとめました。
用途 | おすすめのツール | 特徴 |
ビジネスでのPDF翻訳 | PDFelement, DeepL Pro | 高いセキュリティ、レイアウト保持、編集機能。 |
手軽なオンライン翻訳 | DeepL(無料版), オンラインOCR/翻訳サイト | インストール不要ですぐに使える。機密情報には不向き。 |
海外旅行での利用 | Google 翻訳, Microsoft Translator | リアルタイムカメラ翻訳が便利。オフライン機能も。 |
Webサイトの画像翻訳 | ブラウザ拡張機能 | Web閲覧をしながらシームレスに翻訳可能。 |
スキャン翻訳の精度を上げるためのコツ
スキャン翻訳の精度は、いくつかのポイントに気をつけることで向上させることができます。
元データの画質を確保する
OCRの精度は、元となる画像の品質に大きく左右されます。スキャンする際は、解像度を高く設定し、文字がはっきりと写るようにしましょう。文字がかすれていたり、背景に模様があったりすると、文字認識の精度が低下する原因となります。スマートフォンで撮影する場合は、明るい場所で、対象に対してまっすぐカメラを構えてピントを合わせて撮影することが重要です。
翻訳する言語を正しく設定する
多くのツールは言語を自動で検出しますが、複数の言語が混在している場合や、特殊なフォントが使われている場合は、誤認識することがあります。翻訳精度が低いと感じた場合は、翻訳元の言語を手動で正しく設定し直すことで、精度が改善されることがあります。
専門用語は手動で修正する
AIによる機械翻訳の精度は年々向上していますが、特定の業界で使われる専門用語や、文脈に依存する固有名詞などは、誤訳される可能性があります。翻訳結果はあくまで参考と捉え、最終的には人の目で確認し、必要に応じて手動で修正することが大切です。
スキャン翻訳を利用する際の注意点
スキャン翻訳は便利なツールですが、利用する上でいくつか注意すべき点があります。
情報漏洩のリスクとセキュリティ
無料のオンライン翻訳サービスを利用する場合、アップロードしたデータがどのように扱われるかを必ず確認する必要があります。サービスによっては、データをAIの学習などに利用することがあり、機密情報や個人情報が漏洩するリスクが伴います。ビジネス文書など、機密性の高い情報を扱う場合は、データの二次利用がないと明記されている有料サービスや、オフラインで作業できるデスクトップソフトを利用しましょう。
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翻訳結果の正確性について
機械翻訳は完璧ではありません。特に、契約書や公的な文書など、正確性が厳密に求められる文書の場合、翻訳ツールの結果を鵜呑みにするのは危険です。あくまでも文章の概要を把握するための補助的なツールとして利用し、重要な文書については、専門の翻訳サービスに依頼することを検討してください。
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まとめ
スキャン翻訳は、OCR技術を活用することで、画像データに含まれる文字を翻訳する便利な技術です。ビジネス文書の翻訳から海外旅行まで、幅広いシーンで言語の壁を取り払ってくれます。本記事で紹介したツールや精度を上げるコツを参考にして、自身の目的に合ったスキャン翻訳を活用し、作業の効率化や円滑なコミュニケーションに役立ててください。