契約法務分野の翻訳で失敗しない!翻訳会社の選び方と料金相場を解説

契約法務分野の翻訳

企業のグローバル化が進む現代において、海外企業との取引は事業成長の重要な鍵となります。その際に不可欠となるのが、契約書の翻訳です。

しかし、「どの翻訳方法を選べば良いのか」「コストを抑えたいが品質は大丈夫か」といった悩みを抱える法務・事業担当者の方も多いのではないでしょうか。契約書の翻訳は、単に言語を置き換える作業ではなく、企業の将来を左右する重要なプロセスです。

本記事では、契約法務分野における翻訳の重要性から、適切な翻訳会社の選び方、料金相場、そして翻訳品質を高めるためのコツまで、網羅的に解説します。

契約法務分野の翻訳が重要な理由

契約書の翻訳は、一般的な翻訳とは異なり、高度な専門性が求められます。その理由は、翻訳の品質が直接ビジネスのリスクに結びつくためです。
ここでは、契約法務分野の翻訳がなぜ重要なのか、3つの側面から解説します。

ビジネスリスクに直結する専門性が求められる

契約書は、当事者間の権利と義務を法的に定める重要な文書です。翻訳に少しでも誤りや曖昧な表現があれば、契約内容の解釈に相違が生まれ、将来的に大きな紛争に発展する可能性があります。

例えば、賠償責任の範囲や契約解除の条件に関する条項の翻訳ミスは、企業に多大な金銭的損害をもたらしかねません。法律知識と翻訳スキルの両方を備えた専門家による、正確無比な翻訳が不可欠となるのです。

独特な言語表現と法的解釈が必要になる

契約書には、「Notwithstanding(~にもかかわらず)」「heretofore(これまでに)」といった、日常ではあまり使われない独特の専門用語や言い回しが頻繁に登場します。文脈によって法的な意味合いが大きく変わるため、一つひとつの単語を正確に理解し、適切な訳語を選択しなければなりません。

表面的な翻訳では、原文の持つ厳密なニュアンスを再現できず、契約の有効性そのものが揺らぐ事態にもなり得ます。

契約書特有の表現例 日本語訳 注意点
Indemnify and hold harmless 補償し、損害を与えない セットで使われることが多く、損害からの保護を意味する重要な法的概念。
Time is of the essence 時間の遵守が極めて重要である 納期や支払期日の厳守を法的に義務付ける強力な条項。
Without prejudice 何らの不利益も与えることなく 交渉中の発言などが、後の訴訟で不利な証拠として使われないことを保証する。

各国の法制度や文化への理解が不可欠である

契約の準拠法(どの国の法律に基づいて契約を解釈するか)によって、同じ言葉でも法的な意味合いが異なる場合があります。

例えば、英米法と大陸法では、契約の成立要件や解釈の原則に違いがあります。翻訳者は対象国の法制度に関する深い知識を持っている必要があります。
さらに、商習慣や文化的な背景を理解していなければ、相手方に意図が正確に伝わらない、あるいは不快感を与える表現を用いてしまうリスクもあります。

 

契約書を翻訳する3つの方法

契約書を翻訳するには、大きく分けて3つの方法があります。それぞれにメリットとデメリットが存在するため、状況に応じて最適な方法を選択することが重要です。

自力で翻訳する場合の注意点

語学力に自信のある担当者が自ら翻訳を行うケースです。コストをかけずに迅速に対応できる点が最大のメリットと言えます。

法務の専門知識がない場合、前述したような契約書特有の表現や法的なニュアンスを正確に訳出することは極めて困難です。誤訳のリスクが非常に高く、万が一トラブルに発展した場合の損害を考えると、推奨できる方法ではありません。

AI翻訳ツールを活用するメリット・デメリット

近年、AI翻訳ツールの精度は飛躍的に向上しており、契約書のドラフト作成や概要把握といった場面で有効活用できます。多くのツールが低コストまたは無料で利用でき、スピーディに翻訳結果を得られる点が魅力です。

一方で、AIは文脈や文化的背景を完全に理解しているわけではないため、専門用語の誤訳や、法的に不適切な表現を生成するリスクは依然として残ります。特に機密性の高い契約情報を外部のツールに入力することには、情報漏洩のリスクも伴うため、セキュリティポリシーの確認が不可欠です。

翻訳会社に依頼するメリット・デメリット

法務分野を専門とする翻訳会社に依頼する方法です。最大のメリットは、法律知識と翻訳スキルを兼ね備えたプロフェッショナルによる、高品質で正確な翻訳が期待できる点です。品質チェック体制が整っている会社であれば、誤訳のリスクを最小限に抑えられます。

一方で、他の方法に比べてコストが高くなり、一定の翻訳期間が必要になる点がデメリットです。ビジネス上のリスクを回避するための投資と考えれば、価値は十分にあると言えるでしょう。

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契約書の翻訳を依頼できる会社の種類

専門家に契約書の翻訳を依頼する場合、依頼先は主に3つに分類されます。それぞれの特徴を理解し、自社のニーズに合った依頼先を選びましょう。

翻訳会社

翻訳サービスを専門に提供している会社です。法務、医療、ITなど、特定の分野に特化した翻訳者が多数在籍していることが多く、幅広い言語や専門分野に対応できるのが強みです。

品質管理のプロセスが確立されており、翻訳者による翻訳、別のチェッカーによる校正・校閲という多重チェック体制を敷いている場合がほとんどです。安定した品質と、大量の文書にも対応できるキャパシティが魅力です。

法律事務所

弁護士が所属する法律事務所の中には、契約書の作成やレビューの一環として翻訳サービスを提供しているところもあります。最大の強みは、最新の法改正や判例を熟知した法律の専門家が直接翻訳に関与する点です。

翻訳の正確性だけでなく、法的な有効性や潜在的なリスクまで踏み込んだアドバイスが期待できます。ただし、対応言語が限られていたり、翻訳料金が比較的高額になったりする傾向があります。

個人翻訳者(フリーランス)

フリーランスとして活動している個人翻訳者に直接依頼する方法です。特定の分野で豊富な経験を持つ専門家を見つけることができれば、翻訳会社を介すよりもコストを抑えられる可能性があります。コミュニケーションが直接的で、柔軟な対応を期待できる点もメリットです。

しかし、翻訳者のスキルや経験を見極めるのが難しく、品質が属人的になりがちです。急な依頼や大量の翻訳に対応できない場合や、セキュリティ面での不安が残ることもあります。

 

失敗しない翻訳会社の選び方5つのポイント

数ある翻訳会社の中から、自社の重要な契約書を安心して任せられる会社を選ぶためには、いくつかの重要なポイントを確認する必要があります。

ポイント1:契約法務分野での実績は豊富か

まず、会社のウェブサイトなどで、契約法務分野分野の翻訳実績が豊富かどうかを確認しましょう。具体的な取引実績や、どのような種類の契約書(売買契約、ライセンス契約、秘密保持契約など)を扱ってきたかが示されていると、信頼性を判断する材料になります。
長年の実績がある会社は、それだけ多くの企業から信頼を得ている証拠と言えます。

ポイント2:専門知識を持つ翻訳者が在籍しているか

翻訳を担当する翻訳者が、法律に関する専門知識を持っているかどうかが品質を左右します。
単に語学が堪能なだけでなく、法学部出身者や弁護士資格を持つ者、企業の法務部での実務経験者などが在籍しているかを確認しましょう。

専門家による翻訳は、細かなニュアンスの違いを正確に捉え、法的に有効な訳文を作成する上で不可欠です。

ポイント3:品質チェックの体制は整っているか

翻訳は人間が行う作業である以上、ミスを完全になくすことはできません。そのため、どのような品質チェック体制を整えているかが重要になります。

翻訳者自身による見直しだけでなく、第三者のチェッカーによる校正・校閲(クロスチェック)や、ネイティブスピーカーによる最終確認など、多段階のチェックプロセスが確立されている会社を選びましょう。

チェック体制の例 目的
翻訳者によるセルフチェック 訳抜け、誤字脱字などの基本的なミスの確認
第三者チェッカーによる校正 誤訳、表現の不統一、専門用語の正確性の確認
ネイティブチェック 自然で流暢な言語表現になっているかの確認
最終レビュー 全体の品質を最終確認し、納品準備

ポイント4:セキュリティ対策は万全か

契約書には企業の重要な機密情報が含まれています。情報漏洩は企業の信頼を揺るがす重大な問題に発展しかねません。翻訳会社がどのようなセキュリティ対策を講じているかを確認することが極めて重要です。

秘密保持契約(NDA)の締結はもちろんのこと、データの送受信方法が暗号化されているか、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)などの第三者認証を取得しているかなどをチェックしましょう。

ポイント5:料金体系と納期は明確か

依頼する前に、料金体系と納期について明確な説明を求めましょう。料金は文字数や単語数に基づくのか、ミニマムチャージ(最低料金)はあるのか、特急料金は発生するのかなど、詳細な見積もりを依頼します。

提示された納期が現実的で、自社のスケジュールに合っているかも重要な判断基準です。見積もり依頼時の対応の速さや丁寧さも、その会社の信頼性を測る一つの指標となります。

 

契約書翻訳の料金相場

契約書翻訳の料金は、様々な要因によって変動します。ここでは、料金の計算方法と、価格を左右する主な要因について解説します。

文字単価・ワード単価での計算

多くの翻訳会社では、原文の文字数または単語数に基づいて料金を算出する「文字単語/ワード単語」制を採用しています。

  • 日本語から外国語へ(和文英訳など):日本語の原文1文字あたりの単価で計算します。相場は1文字20円~30円程度です。
  • 外国語から日本語へ(英文和訳など):英語の原文1ワードあたりの単価で計算します。相場は1ワード25円~35円程度です。

これはあくまで目安であり、言語の難易度や専門性によって単価は変動します。

翻訳料金を左右する要因

最終的な翻訳料金は、基本単価に加えて以下の要素によって変わってきます。

  • 言語ペア:英語に比べて、対応できる翻訳者が少ない希少言語の翻訳は料金が高くなる傾向があります。
  • 専門性:高度な専門知識が求められる契約書は、一般的なビジネス文書よりも単価が高く設定されます。
  • 納期:通常よりも短い納期を希望する「特急対応」の場合は、20%~50%程度の割増料金が発生することがあります。
  • 翻訳量:翻訳する分量が多い場合、ボリュームディスカウントが適用されることもあります。
  • 品質チェックのレベル:ネイティブチェックや専門家によるレビューなど、追加の品質チェックを依頼すると、その分料金が加算されます。

 

翻訳の品質をさらに高めるための依頼のコツ

翻訳会社に依頼する際に、発注者側が少し工夫するだけで、納品される翻訳の品質をさらに向上させることができます。

コツ1:関連資料や用語集を共有する

翻訳対象の契約書に関連する過去の契約書、製品カタログ、仕様書などの参考資料を提供することで、翻訳者は背景知識を深く理解でき、より正確で文脈に合った翻訳が可能になります。
社内で統一している専門用語や独自の表現があれば、用語集としてまとめて共有すると、訳文の統一性が保たれ、品質向上に繋がります。

コツ2:翻訳の目的と用途を明確に伝える

翻訳した契約書を「誰が」「どのような目的で」使用するのかを具体的に伝えることも重要です。

例えば、社内での内容確認のために使うのか、それとも相手方と正式に調印するための最終版として使うのかによって、求められる翻訳の精度やトーンは異なります。目的を共有することで、翻訳会社はニーズに最適な翻訳を提供しやすくなります。

コツ3:十分な納期を確保する

高品質な翻訳には、翻訳作業だけでなく、リサーチや校正、レビューといった工程に相応の時間が必要です。タイトなスケジュールでの依頼は、品質低下やミスの原因になりかねません。

可能な限り余裕を持ったスケジュールで依頼することが、結果的に質の高い成果物を手に入れるための鍵となります。

 

まとめ

契約法務分野の翻訳は、グローバルにビジネスを展開する上で避けては通れない重要な業務です。翻訳の品質がビジネスのリスクに直結するため、コストやスピードだけで安易に翻訳方法を選ぶべきではありません。

信頼できる専門家や翻訳会社に依頼し、自社の権利と利益をしっかりと守ることが、海外ビジネスを成功に導くための第一歩となるでしょう。

クロスランゲージの「プロフェッショナル翻訳 」は、高品質な翻訳サービスです。契約書や法的文書は、誤訳が重大なリスクにつながります。専門知識を持つ翻訳者が対応し、厳格な品質管理とネイティブチェックを徹底することで、信頼性の高い成果物をお届けします。ぜひご検討ください。

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