海外ビジネスの展開において、製品マニュアルやWebサイト、契約書などの多言語翻訳は不可欠です。
しかし、翻訳を外部に依頼する際、「料金体系が複雑で分かりにくい」「どのくらいの費用がかかるのか見当がつかない」と感じる担当者の方も多いのではないでしょうか。
翻訳料金は、言語の組み合わせや専門性、納期など様々な要因で変動するため、その仕組みを理解することが重要です。
この記事では、多言語翻訳の料金が決まる仕組みから、言語別の料金相場、費用を抑えるための具体的なポイントまでを分かりやすく解説します。信頼できる翻訳会社を選ぶための注意点も併せて紹介しますので、ぜひパートナー選びの参考にしてください。
多言語翻訳の料金が決まる仕組み
多言語翻訳の料金は、主に「文字単価」「ワード単価」「ページ単価」といった基準で計算されます。
また、少量の翻訳を依頼する場合には「ミニマムチャージ」が適用されることもあります。
ここでは、それぞれの計算方法と特徴について解説します。
文字単価・ワード単価での計算
最も一般的な料金計算方法が、原文の文字数または単語数に基づく「文字単価」「ワード単語」です。
日本語から外国語へ翻訳する場合は「文字単価」が、英語などの外国語から日本語へ翻訳する場合は「ワード単価」が用いられるのが通例です。
この方式は、翻訳する分量に応じて料金が明確に決まるため、公平性が高く、多くの翻訳会社で採用されています。
例えば、日本語1文字あたりの単価が10円で、10,000文字の日本語原稿を英語に翻訳する場合、単純計算で100,000円が見積もりの基本となります。
| 計算方式 | 適用されるケース | 特徴 |
| 文字単価 | 日本語から外国語への翻訳 | 原稿の文字数×文字単価 |
| ワード単価 | 外国語から日本語への翻訳 | 原稿のワード数×ワード単価 |
ページ単価での計算
一部の翻訳会社では、原稿のページ数に基づいて料金を算出する「ページ単価」を採用している場合があります。これは、A4用紙1枚あたり〇円といった形で料金が設定されます。
ただし、1ページあたりの文字数やレイアウトは原稿によって大きく異なるため、公平性の観点から採用されるケースは少なくなっています。文字が詰まったページと、図や余白が多いページで同じ料金になる可能性があるため、依頼する側としては注意が必要です。
ミニマムチャージ(最低料金)とは
ミニマムチャージとは、翻訳量が非常に少ない場合に適用される最低発注料金のことです。翻訳作業には、翻訳者やチェッカーの手配、プロジェクト管理など、分量に関わらず一定の固定費が発生します。
そのため、例えば数単語程度の翻訳であっても、10,000円~20,000円程度の最低料金が設定されていることが一般的です。
少量の翻訳を依頼する際は、事前にミニマムチャージの金額を確認しておくと良いでしょう。
多言語翻訳の料金相場
多言語翻訳の料金は、翻訳する言語によって大きく異なります。需要の多い言語は比較的安価で、専門の翻訳者が少ない希少言語は高くなる傾向があります。
ここでは、主要な言語の料金相場を「日本語から外国語」「外国語から日本語」のケースに分けて紹介します。
英語・中国語・韓国語の料金相場
英語、中国語、韓国語は、ビジネスシーンでの需要が非常に高く、対応できる翻訳者も多いため、他の言語に比べて料金が比較的安価に設定されています。
| 言語 | 日本語→外国語(1文字あたり) | 外国語→日本語(1ワード/1文字あたり) |
| 英語 | 10円~20円 | 12円~25円 |
| 中国語 | 9円~18円 | 9円~18円 |
| 韓国語 | 9円~18円 | 9円~18円 |
フランス語・ドイツ語・スペイン語の料金相場
ヨーロッパ主要言語であるフランス語、ドイツ語、スペイン語などもビジネス需要が高い言語です。英語に比べるとやや高めの料金設定になることが一般的です。
| 言語 | 日本語→外国語(1文字あたり) | 外国語→日本語(1ワードあたり) |
| フランス語 | 13円~25円 | 18円~30円 |
| ドイツ語 | 13円~25円 | 18円~30円 |
| スペイン語 | 13円~25円 | 18円~30円 |
ベトナム語・タイ語など東南アジア言語の料金相場
近年、経済成長が著しい東南アジア諸国の言語も翻訳需要が増加しています。対応できる翻訳者の数や難易度によって、料金は大きく異なります。
| 言語 | 日本語→外国語(1文字あたり) | 外国語→日本語(1ワード/1文字あたり) |
| ベトナム語 | 12円~20円 | 12円~20円 |
| タイ語 | 12円~20円 | 6円~15円 |
| インドネシア語 | 12円~20円 | 12円~20円 |
※上記の料金はあくまで一般的な目安であり、原稿の専門性や難易度によって変動します。正確な料金は、必ず翻訳会社に見積もりを依頼して確認してください。
多言語翻訳の料金を左右する5つの要素
翻訳の基本料金は文字単価やワード単価で決まりますが、最終的な見積もり金額は、いくつかの要素によって変動します。料金がどのように決まるのかを理解することで、より適切な発注が可能になります。
翻訳する言語の組み合わせ
翻訳料金を決定する最も大きな要因は、どの言語からどの言語へ翻訳するかという「言語の組み合わせ」です。一般的に、英語のように翻訳者の人口が多い言語は比較的安価ですが、希少な言語になるほど料金は高くなる傾向があります。
例えば、日本語から英語への翻訳よりも、日本語からスワヒリ語への翻訳の方が高額になります。
専門性の高さ(法律、医療、ITなど)
翻訳する原稿の内容も料金に大きく影響します。一般的なビジネス文書に比べて、法律、医療、金融、ITといった高度な専門知識を要する分野の翻訳は、料金が高くなります。
これは、その分野に精通した専門の翻訳者でなければ対応が難しく、正確性を担保するために調査や確認に時間がかかるためです。
専門性の高い文書の場合、通常料金の20%~100%程度の割増料金が設定されることもあります。
翻訳の品質レベル
翻訳会社によっては、品質に応じて複数の料金プランを用意している場合があります。
例えば、社内確認用の文書であれば、コストを抑えたプランを、プレスリリースやマーケティング資料など、公開を目的とした文書であれば、ネイティブによるダブルチェックが含まれた高品質なプランを選ぶといった使い分けが可能です。
当然ながら、品質レベルが高いプランほど料金も高くなります。
納期の早さ(特急料金)
通常よりも短い納期を希望する場合は、「特急料金」として割増料金が発生します。翻訳は、品質を担保するために一定の作業時間が必要です。納期を短縮するためには、複数の翻訳者を同時に手配したり、他の作業の優先順位を調整したりする必要があるため、通常料金の20%~100%増しの料金が一般的です。
翻訳する分量(ボリュームディスカウント)
大量の翻訳を依頼する場合には、「ボリュームディスカウント」が適用され、単価が割引になることがあります。割引率は翻訳会社や分量によって異なりますが、数十万文字、数百万文字といった単位での発注が見込まれる場合は、事前にボリュームディスカウントの有無を確認することをお勧めします。継続的な発注が見込まれる場合も、交渉の余地があるでしょう。
多言語翻訳の費用を抑える3つのポイント
品質を維持しつつ、翻訳にかかる費用をできるだけ抑えたいと考えるのは当然のことです。ここでは、翻訳費用を効果的に削減するための3つのポイントをご紹介します。
ポイント1:元原稿の表現をシンプルにする
翻訳料金は原文の文字数や単語数で決まるため、原文を簡潔にすることがコスト削減に直結します。冗長な表現や重複する内容を避け、「誰が」「何を」「どうした」が明確に分かるシンプルな文章を心がけましょう。
特に日本語は主語が省略されやすいため、翻訳者が誤解しないよう、主語を明確に記載することが重要です。翻訳の品質向上と、翻訳者からの質問対応にかかる時間削減にも繋がります。
ポイント2:翻訳支援ツール(CATツール)を活用する
翻訳支援ツール(CATツール)は、過去に翻訳した文章をデータベース(翻訳メモリ)に保存し、類似した文章が出てきた際に自動で訳文を呼び出すことができるツールです。マニュアルや規約文書など、改訂が繰り返される文書や、定型文が多い文書の翻訳において特に有効です。
過去の翻訳資産を再利用することで、翻訳料金の割引が適用される場合があります。ツール利用の可否や割引率については、発注時に翻訳会社に確認してみましょう。
ポイント3:複数の会社から見積もりを取る
翻訳会社によって、料金体系や得意な分野、対応できる品質レベルは様々です。そのため、1社だけでなく、複数の会社から見積もりを取ることを強くお勧めします。
見積もりを比較する際は、料金の安さだけでなく、サービス内容、実績、納期、サポート体制などを総合的に評価することが重要です。各社の提案を比較検討することで、自社のプロジェクトに最も適した、コストパフォーマンスの高い翻訳会社を見つけることができます。
信頼できる翻訳会社を選ぶための注意点
料金だけで翻訳会社を選んでしまうと、「品質が低くて使い物にならなかった」「納期が遅れた」といった失敗につながりかねません。
ここでは、品質と信頼性の高い翻訳会社を見極めるための注意点を解説します。
実績や得意分野を確認する
まず、翻訳会社のウェブサイトなどで、過去の実績や得意な分野を確認しましょう。自社が依頼したい分野(例:医療、IT、法律など)での翻訳実績が豊富であれば、その分野の専門用語や業界の慣習に精通した翻訳者が在籍している可能性が高く、高品質な翻訳が期待できます。
具体的な企業名や翻訳事例が掲載されているかどうかも、信頼性を判断する上での一つの指標となります。
ネイティブチェックの有無を確認する
翻訳された文章が、ターゲット言語のネイティブスピーカーにとって自然で分かりやすい表現になっているかは、非常に重要です。
特に、マーケティング資料やウェブサイトなど、顧客の目に触れる文書の場合は、ネイティブチェックが含まれているかを確認しましょう。翻訳者とは別のネイティブチェッカーが校閲を行うことで、より自然で洗練された訳文に仕上がり、誤訳のリスクも低減できます。
| チェック項目 | 内容 | 重要性 |
| 実績 | 依頼分野での過去の翻訳実績 | 高 |
| ネイティブチェック | ターゲット言語のネイティブによる校閲 | 高 |
| セキュリティ | 情報の取り扱いに関する体制 | 極めて高 |
セキュリティ対策が万全か確認する
翻訳を依頼する原稿には、未公開の情報や個人情報など、機密性の高い情報が含まれる場合があります。そのため、翻訳会社がどのようなセキュリティ対策を講じているかを確認することは極めて重要です。
具体的には、秘密保持契約(NDA)の締結に対応しているか、データの送受信方法、情報管理体制などを事前に確認しておきましょう。プライバシーマークやISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)などの認証を取得しているかどうかも、信頼性を測る良い指標となります。
まとめ
多言語翻訳の料金は、言語の組み合わせ、専門性、品質、納期、分量といった様々な要素が絡み合って決まります。料金の仕組みを正しく理解し、費用を抑えるポイントを実践することで、予算内で最大限の成果を得ることが可能です。
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