Microsoft Translatorの情報漏洩リスクとは?Azure版との違いと安全な使い方を解説

Microsoft Translatorのイメージ

WordやOutlook、WebブラウザのBingなどで手軽に利用できるMicrosoft Translatorは、ビジネスシーンで外国語の情報を扱う際に非常に便利なツールです。

しかし、その手軽さの一方で、「入力した機密情報が外部に漏れてしまうのではないか」というセキュリティに関する懸念を抱く方も少なくありません。特に企業活動においては、情報漏洩は深刻な問題に直結します。

この記事では、Microsoft Translatorの情報漏洩リスクについて、無料版と法人向け(有料)版の違いに着目しながら徹底的に解説します。ビジネスで翻訳ツールを安全に活用するための正しい知識と具体的な方法を身につけましょう。

Microsoft Translatorに情報漏洩リスクはあるのか?

Microsoft Translatorの利用を検討する上で、最も気になるのが情報漏洩のリスクです。この問いに対する答えは、利用するサービスの種類によって大きく異なります。

結論:無料版と法人向けAzure版で異なる

結論から言うと、Bing翻訳などの無料版には情報漏洩のリスクが伴い、法人向けの有料サービスであるAzure Cognitive Services Translatorは、情報漏洩のリスクが極めて低いように設計されています。
この違いを理解することが、安全な利用への第一歩です。

参考:Azure AI Translator のデータ、プライバシー、セキュリティ – Azure AI services | Microsoft Learn

無料オンライン翻訳の一般的なセキュリティリスク

一般的に、Google翻訳やDeepLなどの無料オンライン翻訳サービスは、入力されたテキストデータをサービスの品質向上のための学習データとして二次利用する場合があります。
利用規約にその旨が記載されていることが多く、ユーザーが入力した社外秘の契約書や個人情報などが、意図せずサービス提供者に収集・保存され、第三者の目に触れるリスクを完全に否定することはできません。
【関連記事】無料翻訳は危険!? セキュリティリスクを最小化する対策方法 | CROSS LANGUAGE コラム
 

 

【重要】データポリシーで見る無料版とAzure版の違い

Microsoft Translatorの安全性を判断するためには、無料版と法人向けAzure版のデータ取り扱いに関するポリシーの違いを正確に把握する必要があります。

サービスの種類 主な製品例 データ保存・二次利用 ビジネス利用の推奨度
無料版 Bing翻訳
Microsoft Translatorアプリ
あり(サービス改善のため) 非推奨(機密情報)
法人向けAzure版 Azure Cognitive Services Translator API なし(No-Traceポリシー) 推奨
Office製品 Word
Outlook
PowerPointなど
なし(デフォルトでNo-Trace) 推奨

無料版(Bing翻訳など)のデータ取り扱い

Microsoftのプライバシーに関する声明によると、Bingの翻訳サイトやMicrosoft Translatorアプリといった無料のエンドユーザー向け製品では、サービスの改善などを目的として、入力されたテキストデータが記録(ログ)される場合があります。つまり、無料版に機密情報を入力した場合、そのデータがマイクロソフトのサーバーに保存され、分析される可能性があるということです。

法人向けAzure Translatorの「No-Traceポリシー」

一方で、法人向けの有料クラウドサービスであるAzure Cognitive Servicesの一部として提供されるTranslatorは、「No-Trace(トレースなし)」ポリシーを採用しています。これは、翻訳のために送信された顧客データ(テキスト)がマイクロソフトのデータセンターに一切記録・保存されないことを意味します。翻訳処理が完了すれば、入力されたデータは完全に削除されるため、二次利用や情報漏洩の心配がありません。

参考:No Trace – Microsoft Translator for Business

 

ビジネスで安全にMicrosoft Translatorを使う方法

上記の違いを踏まえ、ビジネスシーンでMicrosoft Translatorを安全に利用するための具体的な方法を解説します。

機密情報は法人向けAzure版を利用する

契約書、技術資料、人事情報、顧客データといった機密性・秘匿性の高い情報を翻訳する場合は、必ず法人向けのAzure Translatorを利用しましょう。これにより、No-Traceポリシーが適用され、情報漏洩のリスクを根本から排除することができます。

Office製品の翻訳機能はデフォルトで安全

朗報として、Excel、PowerPoint、WordといったMicrosoft Office製品に組み込まれている翻訳機能は、デフォルトでNo-Trace設定になっています。そのため、日常的に使用するOfficeドキュメント内の翻訳であれば、比較的安心して利用することができます。ただし、企業のITポリシーで機能が制限されている場合もあるため、事前に自社のルールを確認することをおすすめします。

参考:No Trace – Microsoft Translator for Business

無料版の利用は公開情報のみに限定する

もし無料版のBing翻訳などを利用する場合は、その対象をWebサイトで既に公開されている情報や、機密性のない一般的な文章の翻訳のみに限定すべきです。社内の機密情報や個人情報を無料版に入力することは、絶対に避けてください。

 

なぜ法人向けAzure Translatorは安全なのか

法人向けAzure Translatorが高い安全性を誇るのには、明確な理由があります。

送信データが保存・二次利用されない仕組み

前述の通り、No-Traceポリシーが最大の理由です。翻訳リクエストは処理されるだけで、その内容がマイクロソフトのストレージに永続的に保存されることはありません。これにより、入力データがAIの学習に使われたり、従業員が内容を閲覧したりするリスクを防いでいます。

各種コンプライアンス認証の取得

Azureは、CSA STAR、ISO、SOC、HIPAAといった数多くの国際的・業界固有のコンプライアンス認証を取得しています。これらは、第三者機関によって厳格なセキュリティ基準を満たしていることが証明されていることを意味し、高い信頼性の担保となります。

参考:Azure コンプライアンス ドキュメント | Microsoft Learn

データ通信の暗号化

Office製品などからTranslatorサービスへのすべての通信は、SSLによる暗号化で保護されています。これにより、第三者が通信を傍受してデータを盗み見ることを防ぎます。

 

企業が導入すべき情報漏洩対策と社内ルール

ツール自体の安全性に加えて、企業として情報漏洩を防ぐための体制を整えることも極めて重要です。

翻訳ツールの利用ガイドラインを策定する

どのような翻訳ツールを、どのような情報を対象に利用して良いか/いけないかを明確にした社内ガイドラインを策定しましょう。無料ツールの利用を原則禁止とし、安全な有料ツールの利用を推奨するなど、具体的なルールを設けることが有効です。

従業員へのセキュリティ教育を徹底する

従業員一人ひとりが、無料翻訳ツールに潜むリスクを正しく理解することが不可欠です。定期的な研修などを通じて、なぜ機密情報を無料ツールに入力してはいけないのか、その危険性を周知徹底し、セキュリティ意識の向上を図りましょう。

 

Microsoft Translator以外の安全な選択肢

企業のポリシーや翻訳の用途によっては、他の選択肢を検討することも有効です。

セキュリティを重視した有料翻訳ツール

Microsoft以外にも、法人利用を前提とした高セキュリティなAI翻訳ツールは多数存在します。データの二次利用を行わないことを明記し、IPアドレス制限などの高度なセキュリティ機能を備えたサービスを選ぶことで、安全な翻訳環境を構築できます。

【関連記事】WEB-Transer@Enterprise (AI) |【公式】株式会社クロスランゲージ

専門家による人力翻訳サービス

法的拘束力のある契約書や、企業の評判に大きく関わる公式発表など、絶対に誤訳が許されない重要文書については、プロの翻訳者による人力翻訳サービスの利用が最も確実です。
機密保持契約(NDA)を締結することで、情報の安全性を担保しながら、最高品質の翻訳を得ることができます。

【関連記事】プロフェッショナル翻訳 |【公式】株式会社クロスランゲージ
 

まとめ

Microsoft Translatorの情報漏洩リスクは、利用するサービス形態によって大きく異なります。無料版は手軽ですが、ビジネス上の機密情報を扱うには不向きです。一方で、法人向けのAzure TranslatorやOffice製品の翻訳機能は、「No-Traceポリシー」により高い安全性が確保されており、ビジネス利用に適しています。

ツールの特性を正しく理解し、社内で明確な利用ルールを定めて運用することが、利便性と安全性を両立させる鍵となります。この記事を参考に、自社の情報資産を守りながら、翻訳業務の効率化を進めてください。

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